ここ数年の急速なUD普及が投げかけた課題
2008年3月1日
2007年3月下旬、「UD指標化・性能表示調査委員会」の報告書がまとまった。当機構からも委員として参加したが、ユニバーサルデザイン(UD)の「さらなる発展」を促し、また「消費者の信頼性を確保」していくため、経済産業省が行った調査結果には、たくさんの示唆があったように思う。
UDは、人の特性に関係なく、より多くの人に『安全』『快適』『魅力的』で『使いやすい』モノや空間、サービスのデザイン(仕組み)のことである。
日本では、人口の高齢化に伴い、爆発的に普及。今ではおもちゃから住宅、交通機関まで、日常の暮らしのほぼ全てを網羅している。一般の認知度も高まり、市場規模も拡大した。例えばコクヨS&T株式会社では、2000年は合計で1.6億円だったUD製品の売り上げが2005年には56億円になった。
一方、ここ数年の急速な普及は、UDに新たな課題を投げかけた。
言葉だけ先行してしまった結果、3,4年前までは、「UDは理想論」で「UDに専門家はいない」というのが常識だった。そのことが、UD実現の「プロフェッショナル教育」や「使いやすさに特化した専門的な評価手法」の普及と発展を遅らせた。その結果、企業としては「UDを取り入れた」つもりが、利用者からすると「使いにくい」商品を数多く生み出した。2007年、経済産業省も、これらの問題の解決に乗り出したのだった。
UDは社会貢献と思われがちだったが、「人」と「モノ」との関係を根本から変えてしまうほど、ドラスティックな考え方であり、道具であることに気付き始めた企業も増えた。このUDに対して、どれだけの知識とノウハウを養い、対峙するのか。これからが企業の力の見せどころである。(月間オフィスビジネススタンダード第1号掲載分)