安全対策とユニバーサルデザイン(2)
関連分野:安全対策、誤使用、誤認、エラー、事故、危険
2009年2月1日
今回は、前回に引き続き、ユニバーサルデザインと安全対策の関係性について、考えていきたいと思います。
前回、具体的な対策の実施という視点で考えると、「法律や安全基準、ガイドラインの遵守」、「利用者の誤認や誤使用による危険や事故が起きたときの再発防止」、「非常時の安全」という3つの視点で考えることができ、今までは1つ目に挙げたような安全対策が主流でしたが、2つ目に挙げたような安全対策の必要性が高まっていることをお話しました。
今回は、今注目が集まりつつある「利用者の誤認や誤使用による危険や事故が起きたときの再発防止」の視点から考えていきたいと思います。
利用者の誤認や誤使用による危険や事故が起きたときの再発防止を考えるときの難しさは2つあります。
まずひとつは、発売前、利用開始前に予期することが非常に難しい場合が多いという点です。安全基準やガイドラインを遵守していなかったことから事故や危険が起きた場合には、それを徹底することで防ぐことができますが、多くは、安全基準やガイドラインには適合した商品で、思わぬ危険や事故が起きています。なぜでしょうか。ガイドラインや安全基準は、過去の事故や実験を元に作られますから、新機能、ほかとは違う特性や素材、技術の進歩などには対応できないということが少なくないのが現状です。つまり、本来その商品を魅力的にするために考えられた新機能や特徴が、かえって事故や危険につながることがあるのです。昔からあり、皆が共通認識として危険性を知っているものについては、ある程度注意することで防止できますが、まったくの新しい機能や素材、方向性で考え出された新製品では、誤認や誤使用による危険が高まります。また、商品の普及や販売戦略により、商品が開発されたときには想定しなかった利用者や利用状況が引き起こす事故もあります。
この事故の難しさは、誤認や誤使用をするのが「従業員」ではなく「消費者(利用者)」であるということです。「従業員」が起こすエラーをどう防止するかについては、ヒューマンエラーの分野で様々な研究が数多くなされ、それらに基づいた社員教育も行われています。しかし、相手が「消費者(利用者)」となると、一人ひとりを教育することも難しく、使い方を強制することはできません。また、目の前で利用するわけではないので、誤使用していても提供者側が「誤認」や「誤使用」自体に気づくことができませんし、なぜそのような誤認や誤使用が起きるのかについても知ることができません。
こうした危険や事故に対して、UDの考え方とUD実現の技術を活用することで、根本的な原因を多角的に検証し、解決や改善を行うことができます。
次回は、具体的な対策として有効な「誤認・誤使用発見調査」をご紹介します。