1〜4歳までの死亡率に対するユニバーサルデザインという答え(3)
関連分野:事故防止、ヒューマンエラー、幼児、保護者、製品、設備
2010年12月1日
前回、子どもの事故防止に効果を上げた米国の例と日本で始まった取組みの有効性について、「保護者が企業に事故情報を報告する難しさ」、「子どもの事故情報を最も把握している病院との連携の有効性」という視点から理解していきました。
今回は、「ユニバーサルデザイン的発想」「基本的な内容」という点では同じなのに「結果に差が出る」というユニバーサルデザインの取組み全般にみらる現象について、違いが生まれる構造(原因)をご説明したいと思います。
ここでいう「結果」とは、本質的な結果のことです。つまり今回であれば、目的である「子どもの事故が減る」ことを指します。企業の商品などで言えば「具体的な効果に結びつく」ということです。
米国と日本の取組みの違いは、全体の流れが「コーディネート」されているかどうかであり、米国の仕組みは「全体をコーディネート」されており、日本の取り組みは「部分的」な工夫が目立ちます。
もう少し具体的に言うと、すべての登場人物が「全体最適(コーディネート)の視点で取り組んでいるか、部分最適(要素改善)の視点で取り組んでいるか?」という点に相違があります。
全体の流れが「コーディネート」されているとはどういうことか。それは、何のために(目標)どんな風に何をすべきか(適切な行動)という点について、正しい認識を持ち、行動できる構造(関係性)が構築できているということです。
登場人物を中心に全体の流れをあらわすと、
「保護者」が「ケガをした子ども」を連れて病院にいき
「医療従事者」が治療とともに、情報を集め、それを「第三者機関」で収集し、
その情報を元に「企業」へ注意指導や情報提供を行う。
表にすると、
「保護者と子ども」⇒<通院>⇒「医療従事者」⇒<報告>⇒「第三者機関」⇒<情報提供>「企業」
という形になっています。
例えば、「結果」をどう測定するか?という点は、組織の「目標」に直結します。
「取組み病院数」や「事故報告件数」、「企業への改善勧告数」、「取組み企業数」、「改善商品点数」、「アンケート結果」等は、一つの指標にはなりますが、それぞれが本当の目的ではありません。通常、取組みの「結果」として報告されるのは、各組織の「成績表」のような意味合いではわかりやすいのですが、逆に、「部分最適」の発想で「目標値」として設定することは、目的をだんだん見失っていく原因になります。
例えば、「企業」にとってどの部分の情報が重要になるか、という情報を医療従事者が判断することは非常に難しく、「事故報告件数」や「企業への改善勧告数」は増えても、本当に事故がなくなるために必要な情報が、本来届くべきところへ充分に届かないという事が起こりやすい状態になります。
全体最適(コーディネート)の視点で取組みがされるようになると、収集される情報の量と質が違ってきます。更に、企業まで情報が行き着く頻度と速度も違ってきます。結果、防げる事故の量と範囲が違ってきます。そして、結果的に子どもの事故の減少数が変わってきます。
子どもの事故防止はとても重要な課題です。日本の取組みはまだ始まったばかりです。今後の発展に期待しています。