実利用者実験とは 〜リアル・ユーザー・テストとユニバーサルデザイン〜
関連分野:利用者調査 UD検証調査 思考発話法 パフォーマンス測定 観察法
2009年11月1日
ユニバーサルデザイン実現のためには、精度の高い利用者評価が必要である点は以前から何度か指摘してきたとおりですが、では実際にどのような調査が適しているのか、という点について、当センターが推奨している調査方法である「リアル・ユーザー・テスト(実利用者実験)」を今回ご紹介します。
リアル・ユーザー・テスト(実利用者実験)は実利用者研究機構が様々な分野の製品、建築、サービス、等においてその有用性を実際に確認し体系化したテスト方法です。UD検証調査(注1)時には必ずこの手法で実施しています。
このリアル・ユーザー・テストを正しく実施することによって、実際の利用者の「思考と行動を分析」し、商品に反映してユニバーサルデザインを実現する、というものであり、従来の仮説検証型調査方法とはそのスタンスから大きく異なります。
大きな特徴は、その調査対象の物の、「課題発見」と解決策のアイディア化につながる「法則性の発見」をほぼ同時に進めることが出来るという点です。しかし、この調査設計には十分な知識と経験が必要となり、調査設計が従来の調査よりも難しい、という欠点もあります。この難しい部分を乗り越え、技術を使いこなせれば、「実際の利用者」の「実際の行動」から導き出された法則性に乗っ取った、使いやすい製品や、建築物を広く生み出すことが可能となります。
このリアル・ユーザー・テストには以下の9つの成立条件があります。
- 実利用者が被験者である。
- 被験者は、実際の情報入手方法と同じ方法で情報を入手する。
- 実際の利用状況を正確に再現する。
- 観察はその商品を企画、設計、デザインした者が中心となって行う。
- 観察者は、「思考」と「行動」、そしてそれらの原因について「理由」ではなく「誘発する要素」を見抜けるだけの観察技術を身につけている。
- 調査担当者は、製品の提供者ではない利用者にとって第三者的立場の者が行う。
- 調査手法については、思考発話法とパフォーマンス測定法と観察法を状況に応じて使い分ける。
- 被験者の行う「結果」ではなく「思考と行動」から法則性を導いている。
- 調査担当者が、妥当性のある調査結果を得るために必要な知識を持っている。
(実利用者研究機構「リアル・ユーザー・テストの成立条件Ver.1.0」)
※上記9点の内1つでも抜けると、妥当性のある調査結果は得られません。
このように、リアル・ユーザー・テストを成立させるためには幾つかのハードルを乗り越える必要があります。しかし、この調査の活用によって、今まで見過ごされてきた利用者の重要視する本当のポイントを発見し、力(技術、資源、資金)を集中して取り組むことが可能となり、その結果、ユニバーサルデザインの実現が可能となるのです。
視点を変えると、現在の各分野における、経営課題の解決に直結した手法でもあるといえます。
※注1 UD検証調査とは、ユニバーサルデザインを実現するために必要な3つの調査の総称です。3つの調査とは、企画前に行う(1)UD課題抽出調査、試作品で行う(2)誤認・誤使用発見調査、最終の完成品で行う(3)UD効果検証調査の3つです。このUD検証調査を実施するために行う調査の手法名がリアル・ユーザー・テストです。