安全対策とユニバーサルデザイン(3)
関連分野:安全対策、誤使用、誤認、エラー、事故、危険
2009年3月1日
今回は、複雑化した製品や建物、サービスの誤認や誤使用を発見する調査である「誤認・誤使用発見調査」をご紹介します。
「誤認・誤使用発見調査」とは、文字通り、「誤認」や「誤使用」を発見し、そのメカニズムを把握するために行う調査で、製品の開発途中の試作段階、もしくは、事故後の原因分析の際に行う調査です。
ここで言う「誤認」とは、「文言」や「形状」「先入観」から、利用者が正しくない情報を真実だと勘違いしてしまうことを指します。
本当は壊れていないのに、利用者が壊れたと勘違いして返品が相次ぐといった問題も「誤認」に含まれるのです。「誤認」の原因も、単なる見間違い以外にも、「意味あい」「情報の重要度」の取り違い、重要な情報の見落とし、重要でない情報の重要視といったこともあります。こういった問題について、その「誤認」のメカニズムを解明することに役立ちます。
もう一方の、「誤使用」とは、その使い方が正しくないという認識がありながら重要視していないのか、正しい使い方であると勘違いしているのかに関わらず、間違った使い方や扱い方をすることを指します。
調査により、事故や危険につながる使い方とその原因、耐久性を損ねる使い方となぜそう使うのか、利用者が効果的であると勘違いしていることなどを解明することができます。
高度化し、使い方が昔ながらのものと大きく変化した製品や、専門家しか使わなかったものが家庭用に使われるようになったものに関しては、使いにくさの原因の多くはこの「誤使用」から来ている場合があります。
また、「使いにくい」という利用者の実感だけでなく、「製品の充分な効果が発揮できない」といったことから評価を下げることもあります。
つまり、提供者側の意図と利用者の感じ方のギャップを発見し、どうしてそうなるのかというメカニズムを発見するために行う調査になります。
「誤認」と「誤使用」の特徴は、利用者に直接聞いても、理由はおろか、「誤認」「誤使用」の存在にすら気づくことができないということです。
今まで多くの分野で行われてきたアンケートやインタビューのように、「どこを誤認していますか?」ということを聞いても、利用者自身が「誤認」しているので、誤認の存在に気づくことができません。「誤使用」についても同じことが言えます。そこで、「誤認・誤使用発見調査」が威力を発揮するのです。
「誤認・誤使用発見調査」は、本来きちんとそのやり方とエラーの分析方法を学習し、トレーニングを積んでから実施することで効果を発揮する、専門的な調査です。
安全対策へ対処療法的に対応するのではなく、戦略的にエラーのメカニズムと効果的な対策を解明することが、今、様々な分野で求められており、その取り組みが始まりつつあります。